グループホームA その2 |
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※登場人物は全て仮名です。 |
夜
-就寝 |
それから就寝まではお部屋拝見の時間です。
なじみある家具やベット、また、写真や炬燵、また、様々なものがそれぞれ個性的に綺麗にインテリアされています。
ADLが落ち込んだ人には手摺も追加設置されています。トイレの建具も介助できにくい人には、想定とおり、建具を外し、カーテンを設置し介助ができるように工夫しています。また、押入れや収納には布団やクロークBOXを入れていてやはり収納や便所の重要さを目の当りにしました。
しかし、さきほどの久保さんのお部屋に遊びに行ったときに、お部屋の乱雑さに少しびっくりしましたが、よく見たらそのお部屋だけ収納がなく、なんか・・『悪いことをしたなぁ~』と理由を納得し一人つぶやきました。 |
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深夜
-会話 |
僕は2階の利用者とまったく同じ間取りのゲストルームに深夜2時ごろ入りました。
レポートを少しまとめて3時前寝ようかと思いましたが、建具がガラガラと開く音がしたので何事か?廊下に出ました。
すると、久保さんが2階の階段の扉前にたたずんで途方でくれていました。僕が『久保さん早く休まんと。』言うと『何時間も何時間も寝れるもんじゃない。』と珍しく声を荒たてました。僕も他の利用者に気兼ねして仕方なく久保さんのお部屋の前で15分ほど何気ないおしゃべりをして久保さんを残しお部屋に帰りました。
今となれば、なんで1階のリビングまで一緒に降りて久保さんが納得するまで相手をしなかったのか?悔いが残っています。
また、それから暫らくして新しいGHの見学会のときに久保さんが偶然遊びに来ていて、私に対して『なんで、こっちを早く造って早く入れてくれなかったのか。』と僕に言いました。『ただたんに新しいほうがいいのかな?それとも、人間関係が上手くいってないのだろうか?』僕の心に再びさざ波が起こりました。 |
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話は先ほどにもどり私は就寝のため布団にもぐりこみました。
しかし、自身の設計の不具合が理由とはいえ暫らく寝られませんでした。理由は個室入り口の建具に板ガラスですが光が多少漏れる設計にしていました。
しかし、そのお部屋の目の前の廊下に誘導灯の明かりが青々と光っていて、その光が大きなガラス越しに入ってまぶしくてたまりません。
あれから、建具の開口デザインが雰囲気つくりやお部屋の認識性にも役立つことはわかっていますが、様々な複合的な判断からさらに工夫するようにしています。 |
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朝
-朝食 |
GHの朝は早いです。朝6時前には1階のリビングに行きましたが、6時半には利用者たちもぞろぞろ起きてきます。
朝食のほうは夜勤者が深夜にほとんど用意していて、準備万端です。ご飯と味噌汁、焼き魚漬物といたってシンプルですが、僕も眠い目をこすりながら1階リビングで一緒に美味しくいただきました。 |
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ご飯の後には出来る人が掃除をしています。
たとえ隅から隅まで丁寧な掃除ができなくても、利用者も一生懸命しています。
また、帰宅願望を訴える人にはさりげなくスタッフがゴミだしを一緒にするために外出しました。それから、午前10時半頃利用者を何人か誘って車で買い物に行きました。
外出することで不安定だった利用者も帰ってくる頃には落ち着くそうです。
僕もさすがに24時間を超えると身体がうずうずして、一つの場所に落ち着くのが難しくなりそうです。『やはり日常生活とおりたまには外出をしたい。と思うのは人間がもっている普通の欲求です。認知症だからとか・・そんなものは関係在りません。』
それはここでも見ていただいている人にも知ってもらいたいと思います。 |
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別れ |
さて、昼食も一緒に食べて暫らく時間をすごしお別れの時間になりました。
僕は名残惜しく利用者みんなにお別れの挨拶をして廻りました。
ほとんどの利用者は名残おしんでくれ『また、いつでも遊びにおいで。』と泣かせるような言葉を投げかけてくれ、僕の心は、なんだかとても幸せを感じました。
『また、遊びに来るからお元気で・・』僕は心から言葉を発しました。
『失礼します。お元気でさようなら・・』玄関を出た僕に西日がまぶしく輝いていました。
『励ますつもりが逆に癒されたなぁ~・・今日もらった感謝の気持ちを今後の仕事に活かすぞ。』僕は独り言を言いながら帰路につきました。 |
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