従来型特養のあすなろ園は典型的な４人一部屋の多床室で、プライバシーがほとんど無い居住空間であった。利用者のために質の良い空間に変えようという施主の 思いから、補助金を受けて、多床室内に間仕切りを設けて半個室化を行った。

　ただ間仕切りを設けるだけでなく、質の良い空間になるよう設計で工夫した。天井や壁の仕上材を施設用から住宅用に新調し、既存の多床室の鋼製ドアは木製の引き戸に変え、既存の大きな窓の内側には障子を新しく設けた。間仕切りは、隣で寝 ている人の姿は見えないが、外の明かりが奥のベッドまで通るように一部障子とするなど、細部に気を配っている。照明や建具、仕上げなど多床室内を全体的に改修することで、家らしい環境に近づけることができた。 工事ではプライバシー保護改修のほか、共同便所の改修も行った。衛生設備だけでなく、壁、床、天井、建具にいたるまで全面改修し、住まいらしい雰囲気となった。