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岡山県赤磐市にて親子デイサービスという取り組みを行われている「たけのこの家」の澤 健さんにお話を伺いました。これからの社会のあり方など新しい視点が見えてきます。

たけのこの家HPはコチラから

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1.澤さんの経歴について

剱持

まず、澤さんの経歴についておききします。
こちらに来られたきっかけはどのようなものだったのですか?

仕事の関係で大阪にいたのですが、その頃に赤磐市桜ヶ丘にコーラスのグループのための施設をつくりました。その頃は空気のきれいなところでコーラスをやるということが目的でした。車で2時間くらいの距離でね。
平成2年頃に建物を建てましたが、狭かったので今は4軒くらい共有しています。岡山市内にマンションを買ったりしましたが、結局こちらに越してきました。

剱持

なぜ介護の世界に入られたのですか?

ひとつのきっかけは住友生命にいたころ、知り合いのおばあちゃんを介護させてもらったことをきっかけに、介護保険に興味を持ち、公的な保険に加えて民間介護事業の提案をしました。会社の懸賞で第3位になりました。それから人事異動で介護助成事業の部署に行きました。それでこの世界に入りました。

それから、会社を辞めて岡山に引越しました。
色々と介護関係の仕事を探していて、ハローワークなどに相談してみましたが、中々経歴的にも難しいと言われました。そこで、県に相談しに行ったら長寿社会対策課の方が困ったあげく『おたくのような風変わりな履歴を面白いと感じるのは、あそこしかないだろう』と、きのこエスポワール病院を紹介して頂きました。そこで、佐々木院長や篠崎さんに会いました。 (大笑)
採用して頂きましたが、食客のような対応でした(笑)どこでも好きなところに行って良くて、給料も貰えました。ただ、考えてらっしゃったんですね。東京に進出する際に許認可などの対策が出来る人材を求めていたようです。

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剱持

東京都は書類関係など異常なレベルですからね(笑)

そういえば、きのこは何故東京に進出できたのか?という話があります。
普通の業界ならば、たいてい東京が一番進んでいて、地方へ波及というプロセスですが、介護業界はそうではないんです。なぜかというと、彼らは東京都の許認可でエネルギーのほとんどが奪われるんです。新しいことをやろうとすると叩かれるのです。
例えば何か事業を企画したとして、実施の段階で当初の計画と違う点があると、何故違うのかということを説明するための膨大な資料を求められます。でも、普通だったら時間がたつにつれて、勉強して改善するのは当然ですよね?だから育たないのです。

剱持

地方で自由にノウハウを育てた事業者の方が進んでいるんですね。

私も許認可についてはプロのレベルですが、かなり苦しみましたからね。
だから、きのこが東京に進出するときに採用して頂いたのではないですかね。
ジロール神田佐久間町では許認可を担当して、恩返しを出来たかなと思います。
またさらに後日談があって、きのこを辞めた後も相談料として給与の半分が振り込まれていて、ちょくちょくジロールの相談にのっていました。
振り込まれているのを知ったのはかなり後なのですが、返そうとしても経理上入れるところがないと言われて結局もらうことになりました(笑)ありがたい話です。
たけのこの家の立ち上げに関しても色々アドバイスをもらっているので、きのこには足を向けて寝られないですね。施設の感染対策などについてもかなり相談させていただきました。きのこのノウハウはかなり私の後ろにあります。

ところで、新生寿会の東京での評価はどうですか?

剱持

もちろん千代田区・港区・品川区をはじめ行政の評価は高いです。

そうでしょうね。

剱持

ただ、これからは団塊の世代が増えるので、入居者自身も権利意識が強くなります。運営もかなり気をつかう部分が多いようです。地方も10年後くらいはそういった時代になるでしょう。
施設の設備(個室トイレや収納)、食事なども質が問われるでしょう。

きのこは東京にどんどん出ようとする勢いがあるんだねぇ

剱持

澤さんがいらっしゃった頃のきのこはどんな感じだったんですか?

ケアのレベルはやはり、すごかったですよ。ただ、腰を悪くしてリタイアする人が多かったイメージがあります。頑張りすぎちゃってね。

2.たけのこの家について

剱持

では、たけのこの家の事業についてお伺いします。
事業内容についてお教え頂けますか。

たけのこの家の目的は世代間交流です。そのための事業は2つあります。
介護保険のデイサービス定員18名と会員制の子育て支援事業です。
デイサービスのお年寄りと子供の交流の場をつくっています。
子育て支援事業は元々自主事業だったのを平成19年に赤磐市の委託事業にしてもらいました。幼稚園・保育園前の子供たちで3歳以下の子供たちを対象に火水金曜日の午前中に来てもらっています。(利用料:500円/月)
今は少し人数が多くて、今日(水曜日)は13組の人たちに来てもらっています。現在35組の親子に登録して頂いています。
近くの保育園に併設されている子育て支援センターの昨年度の実績が1500組程度ですが、うちは2000組を超えています。今年は2500くらいは行くので、公的なところよりもうちの方が多い状況にあります。やはりニーズがあるんです。
基本的には曜日ごとのメンバー、スタッフを含めて同じにしているので、みんながなじみの関係にあります。夏休みなんかは幼稚園や小学校に上がった人も来てくれて、世代間の幅が広がっています。

剱持

スタッフの方も固定されているのですね。

親子では週3回来られる方もいらっしゃいます。
事業の目的は、ここがニュータウンで核家族化が進み、高齢化も今でこそ低いですが、これから高まっていくことに伴う問題への対策です。
コミュニティも薄く、子育てが難しいので、家庭的な雰囲気の中で日常的に触れ合うことのできるコミュニティを形成し、大勢の大人と関わることで、子供たちが成長できる場をつくっています。

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剱持

デイサービスのお年寄りと子供が触れ合うにはリズムの問題などありますよね。
一日に交流する時間はどれくらいなのですか?

30分を目安にしています。それは、子供・お年よりの年齢、人数、建物の規模から、またスタッフの力量もあるかもしれません、そういったものを考慮すると30分くらいが、お年寄りが子供たちを可愛いと思っていられる限度かなと

剱持

以前はもっと長い時間で設定されていたんですか?

そうです。以前は子供用の部屋が無く、一日中お年よりと子供が同じ部屋で過ごしていました。そうすると疲れてしまうお年寄りが出てきたり、うるさかったりするので、安心・安全な場所では無くなってしまっていました。
そこで、親子専用の場所を新たに作り、お年寄りだけの時間、子供だけの時間、交流の時間をそれぞれ持つようにしました。

剱持

一日の流れを教えて頂けますか。

朝、9時半に子供が来て子供部屋を使います。そして10時過ぎに近くの交流センターまで散歩に行きます。10時半頃にセンターの遊技場で思いっきり遊んでもらって、帰っておやつを食べて、11時頃から交流となっています。
その間にデイサービスは送迎などを行っています。

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剱持

エネルギーをある程度発散してから交流へということですね。

そうです。外で思いっきり遊んだから、中である程度静かにしていられる。
そのあたりは配慮しています。

剱持

午後からはお年寄りの時間ですね。

そうです。親子は午前までで、午後からは普通のデイサービスですね。
月に2組の親子が一緒に食事をするという取り組みも行っています。
また、年に1回はみんなで一緒に食事もします。ハイキングやクリスマス会とかもやってますね。

剱持

スタッフについてお聞きします。どういった方が来られているんですか?

看護士さんと、ボランティアが数名います。もともとお母さんとして来ておられたのですが、お子さんが幼稚園に行かれて、その後ボランティアとして来ていただいている方がいます。
ボランティアでは地域の独居のお年寄りが来てくれていますよ。

剱持

前に聞いていた有償ボランティアでしたっけ?
良い話ですよね。孤独なお年寄りで身寄りがない人も孤独死を避けられるだけでなく亡くなった時『涙を流してくれる人』人間関係を構築できる可能性があるんですから・・・

そうです。地域のお一人住まいの方もここに来れば、誰かに会えます。
やはり、デイは介護度が低いので、いろんな人同士が交流しやすいですね。重度化すると難しい面があります。

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剱持

やはり入所と通所で差がありそうですか?
ここの介護度はどれくらいですか?

大体平均で1.5くらいです。
要介護5の人もいますけどね。認知症の方もかなり居ます。
ここは一般デイです。定員は18名で、ずっと満員ですね。お蔭様で。

剱持

ここの地域はこれからどんどんお年寄りが増えるでしょうね。

そうです。そういう意味ではたけのこの家が人が少なくて運営できないということは無いと思います。まぁ他の施設と差別化が出来ていますからね。
マスコミも宣伝してくれるので、住民の方もここを知ってくれています。
ケアマネをこれからとるひとが来てみたいとか・・・

剱持

お母さんも交流に積極的に参加されていますね。

そうです。たけのこの家の特徴でもあります。
多世代の交流を目標にしていますからね。ただ、以前は子供とお年寄りの交流ということで、お母さんたちは別の部屋に待機してもらっていた時期があります。でも子供が泣き叫んでも話に夢中で気付かない。もうちょっと人間的にも成長して欲しいと思ったんです。
色々試行錯誤の結果、お年寄りと交流して頂こうと思い、参加してもらうようにしました。その時には半分くらいの人が辞めました。お年寄りと交流したくないという考えで。

剱持

拝見していると、ボランティアさんも居て、だれがお母さんか分からなくなってきますね。実は、その誰がどんな人か分からない状況というのが良いんでしょうね。

色んな人が参加して、楽しくやっています。
東京でやってもらえたら、全国に広がると思うんだけどね。

篠崎さんに一度見に来てもらおうかな(笑)