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hyodai

プロローグ ペンシルバニア州ミル・ラン
日本を出てから5ヶ月になろうとしていた。
一昨日ピッツバーグのYMCAを出発して目的地のここまで2日を費やした。それも、ここ最近ではめったに目にかかる事のない、激しく起伏に富んだ道だった。

私が運転している自転車は、日本製のキャンピングカーでタイヤも競技用に比べて太いもので、自転車自身の重量もあり、そして、フロント、リアキャリアにはテント・寝袋の・自炊道具の生活用品や食料、着替えや工具その他一式揃っている。
また、替えタイヤも運んでいる為、総重量が40キロを超える場合も珍しくない、さすがに2日目のきつい坂道では 自力で自転車をこぐことが体力的に難しくなってきたせいか、情けない話、自転車を降りて押すことが増えてきた。

やがて、目的地に近づいたとき・・「し・・しかし・・なんて、山の中なんだ・・なんにもないがな。」
坂道で私は重い自転車を押しながら呟いた。同時に今まで比較的平坦で楽をしてきた身体が、この2日の苦しい行程に筋肉が悲鳴をあげた。

しかし、やがて丘を越え山の中に入って行くと、アメリカでは珍しい懐かしい日本的な渓流が広がってきた。それから、暫らく進むと木々の陰から目的の建物が遠くに見えてきた。

『あれか!?落水荘~長かった・・やっとここまでたどり着いた。サンフランシスコから4ヶ月とちょっと・・・色々あったけど、やっとここまで来たな。』

下り坂も手伝い、自転車を踏む力強さが増したように感じた。その時、私はこれまでの事を一瞬走馬灯のように思い出した・・・

 

 
落水荘

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