5月「準備」
5月初旬私は英会話の勉強も中途半端のまま、渡米の具体的な準備を整えた。
荷物は一般的なツーリストと違いかなりの量になった。主には、先ず衣にあたる下着類や様々な季節に対応できるように衣類を揃え、次に食にあたるコンロ・燃料・コッヘル・箸スプーン類、そして、住にあたるテント・寝袋・敷物などである。当然現地調達が難しい自転車の修理部品や修理パーツも、また、カメラや地図や辞書に代表される書物類や筆記道具も必需品である。
そうなると多量な荷物をどう運ぶか?が問題の焦点となった。おそらく普通のパッキングや運び方では対処できないことは容易に想像できた。私はない頭で智恵をしぼり、ある考えにたどりついた。
それは、自転車本体を全て解体して自転車専用の特殊な袋に入れて 機内荷物として預け日本を出発する予定であるが、私は衣食住全ての荷物を自転車の袋に全て運ぶことを決断した。ただし、自転車のフレームに接する部分には衣類他の柔らかいものを入れ込みクッション代わりを兼ねるようにした。それにより輪行袋はかなりの重量と大きさになったが、身体には貴重品の入った自転車フロントバックを肩から吊り下げるだけの身軽な格好が実現できたのである。
それから、私は先に大きな荷物は大阪空港に運ぶ手配をし、全ての準備を整え心配する両親も元を離れ、設計の先生や旧友や恩人がいる京都・滋賀県に向かった。京都滋賀地方は私が岡山を離れ修行した土地であるため、日々いたるところで別れや旅立ちの宴を 開いてくれて旅の無事を祈りつつ、再開の歓びと別れの宴が続いた。おかげである程度鍛えた身体が弛緩し、これからのハードな日々が乗り越えられるのか?語学力も合わせて私はいっそう不安を覚えた。
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